当事務所に寄せられた御質問とその回答の一部を、クライアント様
ご了解のもとで、ご紹介しております。
なお、回答は当該ケースに対する事務所の見解でありますので、
貴社の類似ケースには、必ずしも該当しない場合もございます。
詳細をお知らせいただきましたら、アドバイスさせていただきます。
Q1.市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法
市場販売目的のソフトウェアを開発しました。
どのように減価償却すればよいか教えてください。
A1.市場販売目的のソフトウェアの減価償却は、最も合理的な方法を採用します。
例えば、ソフトウェアのの販売見込総量に基づく方法、
見込総収益に基づく方法などが考えられます。
このケースでは、販売見込総額に基づく方法を採用しました。
なお、販売可能な有効期間は、原則として3年間です。
これを超える場合には、合理的な根拠が必要です。
従って、今後3年間で見込まれる販売見込み総額に対する、各期の売上計上額の割合で、
減価償却していきます。ただし、毎期の減価償却額は、3年間の均等償却額を下回ることはできません。
<設例1>開発投資総額 15億円、3年間の販売見込総額 30億(X1年度 5億、X2年度 10億、X3年度 5億)
① X1期 5億円売上計上
15億x5億/30億=2.5億 < 15億÷3=5億 ∴減価償却額は5億円
② X2期 未償却残高10億円、X2年度販売実績 10億円、X3年度販売実績 5億円
10億x10億/15億=6.7億 > 15億÷3=5億 ∴減価償却額は6.7億円
法人税法上は3年の均等償却ですので、申告調整することになります。
Q2.2年後には、関係法令の大規模改訂が見込まれており、
これに伴う売上増を見込んでいますが、問題ありませんか?
A2.販売見込総額は見積ですので、不確実性を伴います。
よって、毎期末に翌期以降の見直しを行い、
見直し後の見込み額に基づいて、減価償却計算をしていきます。
販売見込みが当初予想を著しく下回った場合には、その期に一括して
取得原価を減額処理します。
<設例2-1> 設例1のX2期(販売予想が当初見込みを上回った場合)
未償却残高は10億円、X2年の販売実績は20億、X3年の販売見込みは20億の場合
10億円 x 20/(20+20)=5億 15÷3=5億 ∴減価償却は5億円
<設例2-2> 設例1のX2期(販売予想が当初見込みを下回った場合)
未償却残高10億円、X2期に販売見込みを見直した結果、X2期が3億円、x3期が7億円に修正。
①販売見込み総額の減少に相当する取得価額を減額する。
15億x(30億-(5+7+3))÷30=7.5億円 結果、未償却残高2.5億円
②減価償却 x2期は修正後販売見込みどおり、3億円の販売実績
2.5x3/(3+7)=0.75億 2.5億÷2年=1.25 ∴減価償却1.25億円
Q3.A社は自社開発したPKGをB社に売却し、カスタマイズ、アドオン後、再度購入して、最終顧客へ販売します。
この場合、A社は、B社への販売、B社からの購入、最終顧客への販売を計上していますが、問題ありませんか?
A3.
まず、商流を整理してみましょう。
①A社はB社にPKGを提供します。
②B社は、PKGにカスタマイズ、アドオン(+α)を加えて、A社に売却します。
③A社は②で購入したPKG+αを最終顧客へ販売します。
このケースのように複数の企業、取引を介するソフトウェア関連取引では、
委託販売で手数料収入のみを得ることを目的とする取引の代理人のように、
一連の営業過程における仕入及び販売に関して通常負担すべきリスク
(瑕疵担保、在庫リスクや信用リスクなど)を負っていない場合には、
収益の総額表示は適切ではありません。
結論:一連の取引の中で、B社をカスタマイズ等の役務提供をする外注先と捉え、
①と②の差額を外注費として処理し、③のみ売上計上します。
考え方
1.ソフトウェア取引で売上を計上する要件は、(1)取引の実在性と(2)成果物の提供の完了、と見返りの対価の発生です。
A社とB社は、最終顧客との間で、共同してへPKG+αを提供する契約書を締結しました。
①、②、③を一連の取引をして考えますので、①のPKG供与は100%買戻し条件付きであり、取引の実在性に疑義が残ります。
さらに、①の売価は、②で買い戻されますので、実質的な対価は発生していないことになります。
一連の取引の成果物は、③取引時に提供され、完了します。
なお、成果物に占める②で加えられたカスタマイズ、アドオンの割合は、僅少であります。
従って、売上計上の条件を満たすのは、③のみと考えます。
2.さらに、売上計上するためには、通常のリスク(瑕疵担保責任、在庫リスク、信用リスク)を負っている必要があります。
①瑕疵担保責任
実務上、PKG部分とアドオン部分を切り離して、瑕疵担保責任を追及できるかという議論はありますが
B社との関係上、夫々について責任を負っており、PKGの瑕疵担保責任は、最後までA社が負います。
②在庫リスク
上述の通り、①で供与するPKGは100%買戻し条件付きですので、在庫リスクはA社に残ります。
③信用リスク
B社は、①でPKGを一旦買取りますが、②で提供した役務の対価を上乗せしてA社へ売り戻します。
従って、B社に信用リスクは一切、発生しません。
以上1,2より、A社は、②と①の差額を外注費として処理し、③のみ売上計上することが妥当と考えます。
なお、成果物に占める②の割合が大きい場合には、A社の役割は単なる材料の一部を提供すると共に、
最終顧客への契約当事者としての立場に過ぎない場合には、
①で売上を計上し、③で手数料のみ売上計上する処理が考えられます。
以上は、商流からの判断ですので、実質的な取引条件、金額、業務範囲など詳細が決定した段階で、
再度、会計処理を確認する必要がありますので、ご留意ください。