(1)概要
企業会計における決算は、その企業の事業年度の営業活動の結果として、損益の状況や財産の状態を表示することを目的としており、決算が重視されます。
一般会計等における決算は予算執行の結果が、予算に違反していないことを確認することに意味があるのに対し、公営企業の決算は、管理者の業務執行の結果である経営成績を表示するもので、予算と同様に重視されています。
公営企業法
(決算)第30条
決算は、毎事業年度終了後2か月以内に調整しなければならない。
公営企業の会計処理は発生主義ですから、日常の取引の記帳は、現金の収支に関係なく、3月31日の決算日まで、発生に基づいて処理されます。一般会計等は、予算に定めたすべての支出が実際に行われるまで決算処理できませんので、4月1日から5月31日までの2か月間の出納整理期間を設け、全ての現金支出を整理する必要があります。公営企業にはこの出納整理期間がありませんので、迅速に決算が行われることになります。
公営企業法
(決算)第30条
7.(略)決算について作成すべき書類は、当該年度の予算の区分に従って作成した決算報告書並びに損益計算書、剰余金計算書又は欠損金計算書、剰余金処分計算書又は欠損処理計算書及び貸借対照表とし、その様式は総務省令で定める。
一般会計等は、予算に対する執行の実績を示す決算報告書を作成します。
公営企業では、決算報告書に加えて、企業の経営成績と財政状態を示す決算書である損益計算書、貸借対照表等も作成する必要があります。
また、公営企業では、決算においても、予算と同様に収入不足額の補てん財源を説明することになっています。
(決算)第30条
2.地方公共団体の長は、決算及び前項の書類を監査委員の審査に付さなければならない。
(略)
4.地方公共団体の長は、第二項の規定により監査委員の審査に付した決算を、監査委員の意見を付けて、遅くとも当該事業年度終了後三月を経過した後において最初に招集される定例会である議会の認定に付さなければならない。
決算書類の提出を受けた長は、監査委員の監査に付します。監査委員は、予算の執行が適切であったか、企業がその経営の基本原則に照らして、効率的に経営されたかなどを監査し、意見を付します。長は、遅くとも7月1日以降において最初に召集される定例会である議会の認定に付すことになります。決算が議会に認定されると、その要領が公報等により住民などに公表されます。
(2)当期純利益について
最後に、発生主義の損益計算書において計算される「当期純利益」について、企業会計と公営企業会計の違いを説明したいと思います。
企業会計における当期純利益は企業活動のもうけであり、配当や役員賞与などとして利益処分されます。
これに対して、公営企業の「当期純利益」は、4条予算の資本的支出の財源に充てられるものなのです。公営企業は、毎期当期純利益を計上することで、設備を整備、更新して地域住民へ継続的にサービスを提供して、料金収入が得られますし、当期純利益は、企業債償還金にも充てます。言い換えれば、公営企業は、サービスの継続的提供の財源のために、毎期、「当期純利益」を計上する必要があるのです。
これを補填するのが、以下の規程です。
地方公営企業法
(料金)第21条
地方公共団体は、地方公営企業の給付について料金を徴収することができる。
2 前項の料金は、公正妥当なものでなければならず、かつ、能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし、地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならない。
健全な運営を確保して、健全な経営を維持するための財源として必要な額を料金として回収すること、即ち、総括原価方式の採用を認めたもので、適正な料金設定を行う限り、公営企業が赤字になることは理論的にはないのです。
これも公営企業会計の大きな特徴と言えます。
以 上